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【2023年】電気工事士の有効求人倍率は3.7倍!採用難の理由を解説

2023年に電気工事士の採用を考えるカギ、有効求人倍率

電気工事業界の経営者様であれば、ほとんどが採用の壁に当たったことがあるのではないでしょうか。職人を採用するため、ハローワークや新聞、ネット広告を出してみたはいいものの、全く応募は来ないという話もよく聞きます。

そんな時「自社には魅力がないのかもしれない」と悩む前に、ぜひ知って頂きたい有効求人倍率というデータがあるのです。この記事では最新の電気工事士の有効求人倍率から読みとく2023年の業界採用難易度を解説していきます。

【解説】電気工事士の有効求人倍率とは?

「電気工事士ほか職人を採用するのは難しい」「最近は採用難だ」といった話はよく耳にしますが、実際に採用は難しいのでしょうか?

採用の難しさの指標となるデータが「有効求人倍率」です。

・有効求人倍率とは…ハローワークで仕事を探している人の数に対して、ハローワークに掲載している求人の数がどれだけあるかから算出した指標のこと。

例えば、ハローワークに100人仕事を探している人がいたとします。これに対して、ハローワークに求人を載せている企業が100社なら、求人倍率は1.0倍。企業の需要と、働き手のバランスが取れた状態と言えます。

ハローワークに100人仕事を探している人がいたときに、ハローワークに求人を載せている企業が200社あると、求人倍率は2.0倍となります。この場合は人材を採用できない企業が多く出るため、企業の需要と、働き手のバランスが取れていない状態となります。

仕事を探している人の割合が増えれば就職難、働き手を探す企業が増えれば、採用難が起こり、有効求人倍率からその時代の採用/就職の難易度を測ることができるのです。

【2023年最新版】日本の有効求人倍率は1.31倍

上記グラフは、日本全体の有効求人倍率(職業計*)(パートを除く)に対し求職者がどれくらいいるか算出した2023年最新版の有効求人倍率です。

政府からデータが発表されるのはおよそ2カ月後のため、2023年1月現在では最新である2022年11月のデータをもとに現在の採用難易度について解説していきます。

結論から言うと、日本は「やや採用難」の時代で、複数の企業が1人の求職者を取りあう状態です。

厚生労働省が最新データとして出している、2022年11月の有効求人倍率は1.31倍。つまり、1人の求職者を1.31社が取り合い、求人を出しても人材がめぐってこない企業が多くあるという状況です。

さらに実際には業種ごとの人気や給与の額、働きやすさなどの指標で、人が複数集まる企業とそうでない企業がわかれます。「求職者が企業を選ぶ時代」なので、労働条件を良くしないと人が集まらない、企業にとっては難しい状況です。

* 職業計とは、国内すべての業種を含めたデータのこと。

【2023年最新版】電気工事士の有効求人倍率は3.7倍

では、電気工事士(パートを除く)に限定した有効求人倍率を見ていきましょう。

2023年1月現在、厚生労働省が最新データとして出している、2022年11月の電気工事士の有効求人倍率は3.70倍。つまり、電気工事士1人を、3.7社が取り合うという状態。多くの企業が、人が欲しくて求人を出しても獲得することができないのです。

前の項目で見た、すべての業種を含めた日本全体の求人(パートを除く)は1.11~1.31倍で推移しているのに対し、電気工事士に限定した求人倍率は3.5~3.7倍で推移していますから、電気工事士の採用は他の職業と比較しても難易度が高いということになります。電気工事業界の採用ハードルは、2023年以降も同じように高い状態で推移していくものと思われます。

電気工事士の有効求人倍率が高い理由

なぜ電気工事士の有効求人倍率はこれほど高いのでしょうか。これには「建設業および電気工事業の需要」「電気工事士を目指す若者が少ない」など複数の要因が絡み合っています。

この問題を語る上でまず外せないのは、電気工事業を含めた建設業全般の需要は常に多く人を増やしたいと考える企業が増えているということでしょう。国内では街の開発が盛んに行われ、また、電気通信の分野では携帯電話基地局工事の需要増加も起こっています。様々な社会的背景によって、国内の建設業および電気工事業は常に需要がある状態です。

さらに、電気工事士を目指す若者が少ないことも問題だとも指摘されています。

若者が電気工事士を目指さない理由として挙げられているのが、

・電気工事士の仕事を知るきっかけが電気工事業に関係する親族など身近な人による紹介であることが多く、電気工事業界自体が若者にあまり知られていない。

・工業高校や電気工事士の養成施設が減っていて、さらにこれらの学校に入ったとしても業界に就職するのは全体のわずか15%程度と低い割合である。

・電気工事業だけでなく、建設業界全体に3Kのイメージが根強く、人気の職種ではない

などの問題です。

仕事の需要は高いのに、電気工事士を目指す人が増えないことが、電気工事士の有効求人倍率を高くする原因です。

今いる電気工事士を大切にしつつ、2023年以降の採用は工夫を大切に

有効求人倍率が高く、採用が難しい電気工事士という職業。人材を確保するために大切なことは2つあります。

1つ目は、新しく人を採用するのが大変な時代だからこそ、今いる社員に長く働いてもらうことです。電気工事士は他の産業に比べて離職率が高く、勤務体系や現場環境を理由に、20~40%の社員が3年以内に会社を辞めてしまうというデータがあります。待遇や福利厚生などに工夫を凝らし、まずは今いる社員にずっと働いてもらえる仕組みを整えることが、採用難の時代を乗り切る一番の方法と言えるでしょう。

2つ目は、新しい人材を採用するために、様々なルートから人を集める工夫をすることです。無料で使えるハローワークの求人の他に、知人の紹介を使って人を探したり、有料の求人サイトを検討したりと、とにかくたくさんのルートから「人を探しています!」ということを数少ない求職者に知ってもらうことが重要となります。

採用難の時代は2023年以降も続いていくものと思われます。電気工事士を獲得することは困難ですが、背景を知り、工夫した採用活動で乗り切りましょう。

参考資料

経済産業省: 電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について

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高橋義信
上場企業のハウスメーカー設計士で一級建築士(45歳1児の父親) 日本の建築情報からグローバルな情報、話題の企業やサービスまで色々と 紹介していきます。