建築

建設業、値上げの実施率45%「値上げしたいができない」このジレンマを脱却するには

資材の高騰、価格に転嫁できるか

帝国データバンクは今月15日、「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年6月)」を発表しました。この調査では各業界の値上げの実施率値上げ予定時期について調査をしたものです。建設業も資材の高騰や燃料費の高騰などのあおりを受けており、すでに値上げをした事業者のほか、値上げをするか迷っている経営者も多いでしょう。

業界の値上げに対する考え方を知っておきましょう。

各業界の値上げ実施率

出典:帝国データバンク

2022年4月~5月の間に「すでに値上げした」建設業の割合は45.6%。他業界を含めた全体では42.3%なので、建設業はやや値上げの実施率が高い業界であるといえます。今後値上げを実施予定の企業も含めると建設業の66.0%が値上げ実施済みまたは実施予定であることがわかります。

企業規模問わず値上げの傾向

業界別以外に注目していただきたいのが、企業規模別の値上げ実施率です。

値上げ実施済みまたは実施予定の企業は、大企業で64.2%。中小企業69.1%、小規模企業は67.3%と企業規模で実施率は大きく変わらず、むしろ中小企業・小規模企業が大企業よりも値上げにやや積極的であることがわかります。

顧客の取り逃しを恐れて値上げに踏み切れない…と考えている中小企業・小規模企業の経営者にとっては安心できるデータではないでしょうか。

15%が「値上げしたいができない」状況

建設業でも過半数の企業が値上げ実施済みまたは実施予定であるものの、値上げに踏み切れない企業の存在も見過ごせません。

このアンケートで「今後1年以内で値上げする予定はない(3.7%)」「値上げしたいができない(15.8%)」「わからない(14.5%)」と回答した今後の値上げのめどが立っていない建設業者は34.0%いることがわかります。特に、「値上げしたいができない」と回答した15.8%の企業は、値上げを意識せざるを得ないような事情があっても価格転嫁ができていない、大変厳しい状態です。

値上げの実施理由

「値上げ実施済みまたは値上げ予定」と回答した企業のうち、建設業界にかかわりのある事業者の声をピックアップしてご紹介します。

【建築材料】石油精製品の樹脂建材品を取り扱っており、原油価格の高騰および円安は直に影響を受けるため、値上げせざるをえない(家具・建具卸売)

【機械器具】2021 年より鋼材関連(鉄・ステンレス・銅合金・アルミ)で毎月値動きがあり、顧客からの注文書を見るたびに価格変更の依頼を提出している。今後も継続して月次で値上げを申請し続ける(金属部品製造)

【電気工事】購入品(電気機器類、電線ケーブルなど)について値上げをしているが、労務費に関しては出来ていない(一般電気工事)引用元:帝国データバンクプレスリリース

注目は電気工事会社の声です。「購入品については明確に値上げの動きが見えるため値上げを実施できても、労務費は値上げしにくい」という状況は同じように感じている企業も多いのではないでしょうか。

価格転嫁は避けられない

原材料の値上げが続く中で、価格転嫁はもはや避けられません。企業規模問わず、過半数の建設業が値上げを実施しているというデータを参考に、自社の価格を見直しましょう。

参考資料

帝国データバンク:企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年6月)

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高橋義信
上場企業のハウスメーカー設計士で一級建築士(45歳1児の父親) 日本の建築情報からグローバルな情報、話題の企業やサービスまで色々と 紹介していきます。